ご自宅で行うからこそ──訪問リハビリで施術者が大切にしていること

訪問リハビリは、病院や施設ではなく、利用者様のご自宅という“日常の空間”で行われます。そのため、施術者である理学療法士や作業療法士が気を配るポイントは、通常のリハビリとは少し違います。今回は、私たちが訪問の現場で大切にしていることを少しご紹介します。


1. 生活の場に「お邪魔する」意識

ご自宅は利用者様にとって最もリラックスできる場所。その空間に入る私たちは、「おじゃまします」の気持ちを忘れません。靴の脱ぎ履きや荷物の置き方一つにも、清潔感と配慮を持って行動します。

また、玄関の段差や室内の動線、家具の配置など、その家ごとの「暮らしのリアル」を尊重しながらリハビリ内容を調整します。


2. コミュニケーションは、リハビリの第一歩

高齢の方の中には、身体的な痛みや不安だけでなく、孤独感や心配事を抱えている方も少なくありません。そんな方にとって、「話を聞いてくれる人が来る」というだけでも励みになります。

施術だけでなく、ちょっとした世間話や表情の変化への気づきも、リハビリの一環。言葉のやりとりを通じて、信頼関係を築くことが回復への大切な土台になります。


3. “できること”を伸ばす関わり

訪問リハビリの目的は、機能回復だけではありません。たとえ症状が完全に治らなくても、「今の体でできることを増やす」ことが大切です。

たとえば、「台所に立ってお味噌汁を作れるようになる」「トイレに一人で行けるようになる」など、本人にとって意味のある目標を一緒に考え、その実現に向けて支援します。


4. ご家族や介護者との連携も大切に

訪問先では、ご本人だけでなくご家族と接する機会も多くあります。「最近つまずきやすいんです」「夜中に何度も起きて…」など、日常のちょっとした気づきを教えていただけることも。

施術者は、そうしたご家族の声に耳を傾け、介助の方法や環境調整のアドバイスなど、専門的な視点からサポートを行います。


5. 安全管理はプロの責任

最後に何より大切なのは、リハビリ中の「安全」です。ご高齢の方の中には転倒リスクが高い方もおり、立ち上がりや移動の際は細心の注意を払います。また、日によって体調や疲労の度合いが異なるため、毎回の体調確認と柔軟な対応が欠かせません。


おわりに

訪問リハビリは、「治すこと」だけでなく、「その人らしく生きること」を支えるサービスです。利用者様の暮らしの中にそっと寄り添い、ほんの少しでも毎日が快適に、自分らしく過ごせるように──。それが、私たち施術者の願いです。